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第七話 六年間、開けなかった手紙

last update publish date: 2026-08-22 22:07:28

朝、セレスティアが目を覚ましたとき、寝台の端に小さな重みがあった。

 ノエルは横向きになって眠っていた。

 腕には布兎。

 足元には、まだ名前のない小犬。

 いや、名前の候補はある。

 パン。

 犬にパン。

 昨夜その候補を聞いたとき、セレスティアは笑えばよいのか、泣けばよいのか分からなかった。

 硬くなっても捨てられなかったもの。

 お腹が空いた夜に、そこにあるだけで少し安心できるもの。

 ノエルにとってパンとは、食べ物であると同時に、見捨てられないためのお守りだったのかもしれない。

 その名を小犬につけようとしている。

 可愛いだけではない。

 痛々しい。

 でも、痛々しさごと大切にしたい名前だった。

「……ん」

 ノエルが小さく身じろぎした。

 まだ眠っている。

 寝顔は年相応に幼い。

 起きているときのほうが、ずっと大人びて見える。

 つまり、この子は起きている間、ずっと身構えているのだ。

 それを思うと、胸が苦しくなった。

 セレスティアはそっと寝台から降りようとした。

 その瞬間、ノエルの手が寝間着の袖を掴んだ。

「……行かないで」

 寝言だった。

 セレスティアは動きを
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